インボイス経過措置が2026年10月に変わる|鰻専門店が今すぐ動くべき仕入れ控除の実務対策

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インボイス経過措置が2026年10月に変わる|鰻専門店が今すぐ動くべき仕入れ控除の実務対策

「インボイスへの対応はとりあえず済ませた」「経過措置があるからまだ大丈夫」——2023年10月のインボイス制度(適格請求書等保存方式)スタート時にそう判断し、それ以来ほぼ放置している飲食店オーナーは少なくないかもしれません。

しかし2026年10月1日、その「大丈夫」の根拠が変わります。現在、適格請求書を発行できない免税事業者からの仕入れに対して認められている「仕入税額相当額の80%を控除できる」という経過措置が終了し、50%への引き下げとなります。

鰻専門店にとって、これは無視できない話です。仕入れ先の養殖業者・卸業者・タレの製造元など、個人や零細事業者との取引が多い業態ほど影響が大きくなります。あと5ヶ月でどう動くかが、今後の仕入れコストと税負担を決めます。

本記事では、インボイス制度の現状整理から、2026年10月の変更内容、鰻専門店が受ける具体的な影響、そして今すぐ取るべきアクションを実務レベルで解説します。


インボイス制度の基本と現在地(2026年5月時点)

適格請求書等保存方式とは

インボイス制度とは、消費税の仕入税額控除を受けるために、税務署に登録した事業者が発行する「適格請求書(インボイス)」の保存を義務付ける制度です。2023年10月1日にスタートしました。

飲食店が消費税の申告を行う際、仕入れや経費にかかった消費税(課税仕入れ)を売上にかかった消費税(課税売上げ)から差し引くことができます。これを「仕入税額控除」といいます。

制度開始後は、この控除を受けるために「適格請求書発行事業者」から発行された請求書・領収書(インボイス)の保存が原則として必要です。裏を返せば、免税事業者(年間売上高1,000万円以下で消費税を納税していない事業者)から仕入れた場合、原則として消費税の控除ができなくなりました。

経過措置の仕組み

とはいえ、制度スタート直後からすべての取引先の切り替えを強制するのは現実的ではないため、段階的な緩和措置(経過措置)が設けられています。

期間 免税事業者からの仕入れに対する控除割合
2023年10月1日〜2026年9月30日 仕入税額相当額の80%を控除可
2026年10月1日〜2029年9月30日 仕入税額相当額の50%を控除可
2029年10月1日以降 控除不可(0%)

つまり現在(2026年5月)はまだ「80%控除」の期間中ですが、あと5ヶ月で「50%控除」に切り替わります。その次の節目である2029年10月には、控除がゼロになります。


2026年10月の変更が鰻専門店に与える具体的な影響

免税事業者からの仕入れが多い業態の特性

鰻飲食業界の仕入れ構造には、インボイス制度の影響を受けやすい特性があります。

個人・零細の養殖業者との直接取引:産地直送や顔なじみの養鰻業者から直接仕入れているケースでは、相手方が免税事業者であることが少なくありません。

小規模な卸業者・仲卸業者:仕入れのルートが個人商店や家族経営の卸業者を経由している場合、適格請求書発行事業者に登録していない可能性があります。

タレ・山椒・食材の地元仕入れ:秘伝のタレに使う醤油やみりん、特定の食材を地元の中小製造業者や農家から調達している場合も同様のリスクがあります。

コスト増のシミュレーション

具体的な数字で確認しましょう。

たとえば、免税事業者の仕入れ先に年間税込み220万円(本体200万円+消費税20万円)を支払っているとします。

現在(2026年9月まで):80%控除

  • 控除できる消費税額:20万円 × 80% = 16万円
  • 控除できない消費税額:20万円 × 20% = 4万円(実質コスト増)

2026年10月以降:50%控除

  • 控除できる消費税額:20万円 × 50% = 10万円
  • 控除できない消費税額:20万円 × 50% = 10万円(実質コスト増)

つまり、同じ取引先から同じ量を仕入れているだけで、年間の実質コストが4万円から10万円に増える計算です。複数の免税事業者から合計年間1,000万円(税込み)を仕入れている場合、影響額は桁が変わります。

この差額は、積み重なれば利益率を直撃します。仕入れコストの上昇を吸収できない店舗は、値上げか仕入れ先の変更を迫られることになります。


今すぐ確認すべき5つのチェックポイント

仕入れ先の登録番号を確認する

最優先で行うべきは、現在取引しているすべての仕入れ先が「適格請求書発行事業者」として登録されているかどうかの確認です。

確認方法:

  • 取引先から受け取っている請求書・領収書に「登録番号(Tから始まる13桁の番号)」が記載されているか確認する
  • 国税庁の「適格請求書発行事業者公表サイト」(インボイス登録情報の公開サイト)で登録番号を検索する
  • 取引先に直接「登録番号を教えていただけますか」と問い合わせる

登録番号がない、または記載されていない請求書・領収書は、原則として仕入税額控除の対象外となります。2026年10月以降は控除割合がさらに下がるため、未登録の仕入れ先の把握を急いでください。

請求書・領収書の様式を確認する

適格請求書には、以下の記載事項が必要です。現在受け取っている書類がこの条件を満たしているか確認しましょう。

  • 適格請求書発行事業者の氏名または名称
  • 登録番号(T+13桁の番号)
  • 取引年月日
  • 取引内容(軽減税率対象品目の場合はその旨を明記)
  • 税率ごとに区分した対価の額および消費税額
  • 書類の交付を受ける事業者の氏名または名称

様式が整っていなければ、たとえ適格請求書発行事業者からの仕入れでも控除を受けられないリスクがあります。特に手書きの納品書や昔ながらの様式の領収書には注意が必要です。

会計ソフト・POSの対応状況を確認する

インボイス対応の会計処理を正しく行うには、使用している会計ソフトやPOSシステムがインボイス制度に対応していることが前提です。

freee・マネーフォワード・弥生会計などの主要クラウド会計ソフトはすでに対応済みですが、古いバージョンを使い続けている場合や、未対応のシステムを使っている場合は、税率区分や控除割合の処理が正確に行われていない可能性があります。

ソフトの対応バージョンを確認し、必要であればアップデートまたはリプレイスを検討してください。

未登録仕入れ先への対応方針を決める

仕入れ先に未登録業者がいる場合、次の3つの選択肢から方針を決める必要があります。

①登録を促す:取引継続を前提として、適格請求書発行事業者への登録を相手方に依頼します。ただし、零細業者や高齢の個人業者にとっては登録手続きや消費税の申告・納税が負担になるため、強制はできません。

②価格再交渉(値引き):控除できなくなった消費税分をコスト増として認識したうえで、仕入れ価格の引き下げ交渉を行います。「2026年10月からの制度変更を踏まえ、仕入れ単価を○○円引き下げてほしい」という形での相談が実務的です。

③代替仕入れ先の確保:登録済みの業者への切り替えを進めます。品質や関係性を維持しながら切り替えを進めるには時間がかかるため、早めに動くことが重要です。

税理士・顧問会計士に状況を報告する

インボイス制度の実務対応は、消費税の申告や税務調査に直接影響します。顧問税理士や会計士がいる場合は、現在の仕入れ先の登録状況と未対応の取引件数・金額を報告し、2026年10月以降の処理方法について確認しておきましょう。

顧問がいない場合は、この機会に税理士への相談を検討することをお勧めします。中小企業向けの税務支援を行う税理士のなかには、初回相談を無料で受け付けているケースもあります。


簡易課税制度の活用も選択肢のひとつ

簡易課税制度とは

消費税の申告には「一般課税(本則課税)」と「簡易課税」の2種類があります。

簡易課税制度は、課税売上高が5,000万円以下の中小事業者が選択できる計算方法で、実際の仕入れに係る消費税額を計算する代わりに、売上高に対して業種ごとに定められた「みなし仕入れ率」を適用して消費税額を算出します。

飲食業のみなし仕入れ率は第4種(60%)です。売上にかかる消費税の60%を「仕入れ等にかかった消費税」とみなして控除できます。

簡易課税を選ぶメリット・デメリット

メリット

  • 仕入れ先がインボイスを発行できるかどうかを一切気にしなくてよい
  • 請求書・領収書の保存・管理の手間が軽減される
  • 実際の仕入れ消費税額より控除額が大きくなるケースがある

デメリット

  • 一度選択すると、原則2年間は変更できない
  • 大規模な設備投資を行った年などは、一般課税のほうが有利になる場合がある

簡易課税を選択すれば、免税事業者からの仕入れによる影響を受けません。ただし、売上規模・仕入れ構造・設備投資の計画によって有利不利が変わるため、必ず顧問税理士に確認したうえで選択してください。


経理・帳票の実務フロー整備

取引先ごとのインボイス対応台帳を作る

仕入れ先の対応状況を一覧で把握するために、次のような台帳(スプレッドシートで十分)を作成することをお勧めします。

取引先名 主な仕入れ品目 年間仕入れ額(税込) 登録番号 対応状況
○○養鰻 活鰻(ニホンウナギ) 480万円 T1234567890123 登録済み
△△水産 冷凍蒲焼き 220万円 未確認 要確認
□□醤油店 特製醤油 36万円 未登録 交渉中

この台帳があれば、2026年10月以降にどの取引先からの仕入れが控除減の対象になるかを一目で把握でき、対応の優先順位をつけやすくなります。

証拠書類の保存ルールを統一する

インボイス制度では、帳簿と適格請求書の両方の保存が求められます。電子帳簿保存法(電帳法)の対応も合わせて求められる場合があるため、紙・データの保存ルールを整理しておきましょう。

  • 電子データで受け取った請求書・領収書は、電帳法の要件に従い検索可能な形式で保存する
  • 紙で受け取ったものは、スキャンして電子保存するか、紙のまま7年間保存する
  • 保存場所・命名規則を統一し、担当スタッフが一人でも把握できる体制にする

まとめ:2026年10月までの行動スケジュール

インボイス制度の経過措置変更まであと5ヶ月。今の時期にやるべきことを整理します。

2026年5月中(今すぐ)

  • すべての仕入れ先の登録番号を確認・リスト化する
  • 未登録業者の年間仕入れ額を集計し、影響額を試算する
  • 顧問税理士に現状を報告し、簡易課税の適否を相談する

2026年6〜7月

  • 未登録仕入れ先に対して登録依頼または価格交渉を行う
  • 会計ソフト・POSのバージョンを確認し、必要なアップデートを実施する
  • 代替仕入れ先の調査・見積もり取得を開始する

2026年8〜9月

  • 対応が完了していない仕入れ先について最終判断(継続か切り替えか)を下す
  • 帳票保存ルールの整備と社内周知を完了させる
  • 2026年10月以降の会計処理フローをスタッフに共有する

インボイス制度は、対応が後手に回るほどコスト増と事務負担が重なります。「まだ先の話」ではなく「今がラストチャンス」という認識で、一つひとつ確認を進めてください。

仕入れコストや人材の問題と並んで、税務・経理の実務を整備することが、長く安定して店を続けるための基盤になります。

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